
KITCHEN JOURNAL
What Happens in a Hotel Kitchen After Closing?
ホテル厨房の閉店後は何をしている?
From the final plate to cleaning, tomorrow's prep and the moment the kitchen goes quiet.
最後の一皿から片付け・清掃・翌日の準備・退勤まで。
The last plate leaving the kitchen does not mean the shift is over. Food must be organized, equipment cleaned, workstations reset, and the next service prepared before the staff can leave.
This journal follows what happens inside a Japanese hotel kitchen after service — from the final order to cleanup, tomorrow's preparation, the final checks and the moment the kitchen finally becomes quiet.
ホテル厨房やレストランの仕事を調べている人のなかには、
「閉店したらすぐ帰れる?」
「最後の料理を出したあと、何をしている?」
「掃除や片付けにはどんな仕事がある?」
「営業終了から退勤まで、どれくらい仕事が残っている?」
そんな疑問を持っている人もいると思います。
厨房の仕事は、最後のお客さんが帰ったところでも、最後の料理を出したところでも終わりません。
ここでいう「閉店後」とは、ホテルそのものが閉まるという意味ではありません。
ホテル内のレストラン、宴会、ディナーなど、その厨房が担当している営業を終えたあとの時間です。
最後の料理を送り出す。
新しいオーダーが止まる。
調理機器を使う回数が減る。
厨房の空気は少しずつ変わります。
しかし、まだ仕事は残っています。
閉店作業とは、今日使った厨房をただ片付けることではありません。明日また料理を始められる「スタートライン」へ厨房を戻す仕事です。
このKITCHEN JOURNALは、制作者自身のホテル厨房を含む調理現場での実務経験を土台に、公開情報や資料による調査を加えて制作しています。
閉店作業の内容、順番、担当、所要時間はホテル・厨房・営業形態・シフトによって異なるため、一つの職場だけを基準にせず、厨房で共通しやすい仕事の流れを中心に整理しています。
それでは、最後の料理を出してから退勤するまで、ホテル厨房でどのような仕事が行われているのかを順番に見ていきます。
JOURNAL 01
The last plate is not the end of the shift. 最後の料理を出しても、厨房の仕事は終わらない
営業中の厨房では、まず料理をお客さんへ届けることが優先されます。
注文を確認する。
食材を調理する。
盛り付ける。
料理をサービススタッフへ渡す。
そして最後のオーダーが入り、最後の料理を送り出します。
ここで客席側の営業は終わりへ向かいます。
しかし、厨房側ではここから別の仕事が始まります。
「営業が終わる時間」と「勤務が終わる時間」は同じとは限りません。
まだ作業台には食材があります。
使用した鍋や器具があります。
床や調理設備には、その日の営業で付いた汚れがあります。
翌日の営業で必要になる準備もあります。
一日の中で閉店後がどこに位置するのかを知ると、ホテル調理師の働き方全体も分かりやすくなります。
JOURNAL 02
Closing begins with what service leaves behind. 閉店後は、まず残った料理と食材を整理する
営業が終わったら、最初にその日の営業で残ったものを整理していきます。
営業中は料理を出すことが優先されるため、作業台や冷蔵庫にはさまざまな食材や容器があります。
仕込み済みの食材。
営業中に使用していた食材。
残った料理。
翌日に使うもの。
状態を確認する必要があるもの。
必要なものは、その職場で決められた方法に沿って整理・保管します。
同時に、翌日の営業で必要なものが不足していないか確認することもあります。
冷蔵庫の中も「次に使う状態」へ戻す
営業中は、冷蔵庫から何度も食材を出し入れします。
閉店後には、
食材が適切な場所へ戻っているか。
容器が整理されているか。
翌日使うものが分かる状態になっているか。
必要なものが不足していないか。
といったことを確認します。
閉店後の食材整理は、「今日残ったもの」の整理であると同時に、「明日最初に使うもの」を整える仕事でもあります。
JOURNAL 03
Everything used during service has to be reset. 鍋・器具・作業台を「次に使える状態」へ戻す
一日の営業では、多くの調理器具を使います。
鍋。
フライパン。
バット。
ボウル。
包丁。
まな板。
トング。
レードル。
営業後には、使用したものを洗浄し、必要な場所へ戻します。
ただし、すべてを閉店後になってから一気に始めるとは限りません。
閉店作業は、営業中から少しずつ始まっている
使い終えた器具を洗う。
もう使わない食材を冷蔵庫へ戻す。
空いた作業場所を拭く。
営業終了が近づいた持ち場から、不要になったものを片付ける。
営業に支障がない範囲で少しずつ整理できていれば、最後の料理を出したあとの仕事も進めやすくなります。
閉店作業の速さは、「閉店してからどれだけ速く動くか」だけではなく、営業中にどこまで次の状態を作れているかでも変わります。
JOURNAL 04
Cleaning is part of finishing service. 厨房清掃まで終えて、一日の営業が完成する
閉店後の仕事で大きな割合を占めるのが、厨房の清掃です。
一日料理を作れば、厨房にはさまざまな汚れが残ります。
油。
水。
食材の細かな破片。
ソースや調味料。
営業中にも必要な清掃を行いますが、一日の終わりには改めて各場所を整えます。
作業台を清掃する
食材、皿、器具が並んでいた作業台を片付け、清掃します。
翌日のスタッフが入ったときに、次の仕込みを始められる状態へ戻していきます。
調理機器まわりを清掃する
コンロや調理機器の周囲には、その日の調理で汚れが残ることがあります。
その日の汚れを必要に応じて清掃し、次に使用できる状態へ整えます。
シンクや洗浄場所を整える
器具を洗い終えたあとには、洗浄に使用した場所そのものも整えます。
床を清掃する
厨房ではスタッフが何度も移動し、食材、水、油などが床へ落ちることがあります。
そのため最後に床を清掃し、一日の営業で残った汚れを落としていきます。
ごみを整理する
営業中に出た包装材や食材くずなども、職場で決められた方法に沿って整理します。
厨房清掃の目的は、単に見た目をきれいにすることではありません。次の営業を安全に始められる厨房へ戻すことです。
JOURNAL 05
What happens after service, step by step? 営業終了から退勤までを時間の流れで見る
ここまでの閉店作業を、ホテル内レストランのディナー営業が終わった場合を例に、時間の流れとして整理してみます。
実際の順番や時間は、ホテル、厨房、営業内容、人員、当日の状況によって変わります。
| タイミング | 主な仕事 | 仕事の目的 |
|---|---|---|
| ラストオーダー前後 | 最後の料理を作りながら、空いた場所から整理を進める | 営業を止めずに閉店作業へ移行する |
| 営業終了直後 | 残った食材・料理を確認する | 保管・整理するものを分ける |
| 閉店作業前半 | 器具洗浄・持ち場の片付け | 使用したものを元へ戻す |
| 閉店作業中盤 | 作業台・機器まわり・シンク・床などを清掃 | 次に使える厨房へ戻す |
| 閉店作業後半 | 翌日の準備・在庫確認・引き継ぎ | 次のシフトを始めやすくする |
| 退勤前 | 厨房全体の最終確認 | 残った仕事や問題がないか確認する |
まだ営業中。でも閉店への準備も始まっている
最後まで残っているオーダーを確認します。
料理を作っている担当がいる一方で、すでに使わなくなった器具や食材を整理している担当もいることがあります。
最後の一皿が厨房を出るまでは営業中です。
しかし厨房の中では、少しずつ「営業」から「閉店作業」へ移行しています。
食材と持ち場を整理する
料理を出し終えたら、営業中に使用していた食材を整理します。
作業台の上にあったものが一つずつ減り、冷蔵庫や決められた場所へ戻っていきます。
器具と厨房を洗浄・清掃する
鍋や器具を洗う。
作業台を清掃する。
シンクを整える。
調理機器まわりを清掃する。
床をきれいにする。
営業中とは違う種類の忙しさが続きます。
明日の仕事を少しだけ先へ進める
厨房によっては、片付けと並行して翌日の準備も行います。
明日使う食材を確認する。
時間のかかる仕込みを進める。
不足しているものを確認する。
次の担当者へ伝えることを整理する。
今日の営業が終わった場所で、すでに次の営業の準備が始まっています。
最後に厨房を確認して退勤する
片付けと清掃が終わったら、最後に厨房を確認します。
使用したものは戻っているか。
食材は整理されているか。
設備や持ち場に問題はないか。
次のシフトへ伝えることは共有されているか。
必要な確認を終えて、その日の勤務が終わります。
JOURNAL 06
Tomorrow's service starts the night before. 閉店作業は「明日の厨房」を作る仕事でもある
閉店後に行う仕事は、今日使ったものを片付けることだけではありません。
翌日の仕事を少し進めることもあります。
ホテル厨房では、次の日にも朝食、ランチ、宴会、ディナーなどの営業があります。
特に翌朝すぐ必要になるものや、準備に時間がかかるものは、前のシフトで進めておく場合があります。
翌日使う食材を確認する。
必要なものを準備する。
先にできる仕込みを進める。
在庫を確認する。
次の担当者へ伝えることを整理する。
ここで重要になるのが「引き継ぎ」です。
すべての仕事を一人のスタッフが翌日まで続けるわけではありません。
閉店作業を担当した人が準備した状態を、次のシフトのスタッフが受け取ります。
明日の厨房は、明日最初に出勤する人だけが作るものではありません。前日の最後の仕事から、すでに始まっています。
この視点で見ると、閉店作業は「一日の終わり」だけではなく、前のシフトから次のシフトへ仕事を渡す時間でもあります。
JOURNAL 07
Closing is a team job. 閉店作業は、厨房全体で終わらせる
ある程度の規模がある厨房では、閉店作業を一人ですべて行うとは限りません。
担当していた持ち場ごとに片付けを進める場合もあります。
食材を整理する人。
器具の洗浄を進める人。
調理機器を清掃する人。
翌日の仕込みを進める人。
床や周囲を整える人。
それぞれが自分の仕事を進めながら、厨房全体を閉めていきます。
自分の持ち場だけ終わったとしても、ほかに仕事が残っている場合があります。
必要であれば周囲を手伝いながら、厨房全体の進行を見ます。
営業中だけでなく、閉店後も「自分の仕事」と「厨房全体の仕事」の両方を見る場面があります。
JOURNAL 08
Why can closing work feel so hard? 閉店後の仕事がきつく感じやすいのはなぜ?
閉店作業の一つひとつが、特別に難しい作業とは限りません。
それでも、一日の中では大変に感じやすい時間です。
すでに営業を終えたあとの仕事だから
それまでに仕込みや営業を行い、長い時間立って仕事をしています。
忙しい日には厨房内を何度も移動し、鍋や食材などを扱っています。
その状態から片付けと清掃へ入るため、同じ作業でも身体が重く感じることがあります。
最後の料理を出すと緊張が少し抜ける
営業中はオーダーや時間に意識が向いています。
そのため、忙しい時間には疲労を強く意識せず動いていることもあります。
最後の料理を送り出し、オーダーが止まると、それまでの緊張が少しずつ抜けていきます。
そのときになって、疲れを強く感じることもあります。
早く帰りたい。でも雑には終われない
一日の最後なので、できるだけ早く仕事を終えたいと思う日もあります。
しかし、食材整理や清掃、翌日の準備を雑にすれば、次の営業へ影響します。
閉店後は、疲れている時間だからこそ、「速く終わらせること」と「次に使える状態まで整えること」の両方が必要になります。
早朝勤務、営業ピーク、立ち仕事、人間関係、閉店後の片付けなど、ホテル調理師が大変と感じやすい理由全体については、こちらの記事で詳しく整理しています。
JOURNAL 09
Closing time does not tell you when the shift ends. 「閉店時間」だけでは実際の退勤時間は分からない
「22時閉店なら、22時に仕事が終わるのか?」
仕事を探している人にとっては、かなり重要な疑問です。
しかし、閉店時間だけでは実際の退勤時刻までは分かりません。
営業終了後にどれくらい仕事が残るかは、その日の状況によって変わります。
その日の営業がどれくらい忙しかったか。
何人で閉店作業を行うか。
営業中にどこまで片付けられているか。
厨房やレストランの規模。
翌日の仕込みをどこまで行うか。
その日に特別な清掃や作業があるか。
そのため、「閉店から必ず○分後に退勤できる」と一律には言えません。
求人を見るときは、レストランの営業時間ではなく「自分のシフトが何時までなのか」を確認することが大切です。
早番・中番・遅番・中抜けなどを含め、ホテル調理師の実際の勤務時間についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
JOURNAL 10
The same kitchen begins to feel different. 片付けが進むと、同じ厨房の時間が変わっていく
営業中の厨房には、さまざまな音があります。
オーダーの声。
食器や器具の音。
調理機器の音。
換気扇。
スタッフ同士の声。
サービススタッフが行き来する音。
しかし最後の料理を出し、片付けが進むにつれて、その音は少しずつ減っていきます。
料理がなくなる。
食材が冷蔵庫へ戻る。
皿や器具が所定の場所へ戻る。
作業台が空いていく。
一つずつ仕事が終わっていく。
数時間前まで料理や食材で埋まっていたステンレスの作業台が、また何もない状態へ戻っていきます。
場所は同じです。
設備も照明も同じです。
それでも、営業中と閉店後では厨房の感じ方が変わります。
閉店後は、仕事が突然終わる時間ではありません。厨房から一つずつ「営業」が消えていく時間です。
そして、この「まだ勤務中なのに、仕事の緊張だけが少しずつ抜けていく時間」は、文章だけでは伝えきれない厨房の感覚でもあります。
CONNECTED STORY
Before the Kitchen Goes Quiet|厨房が静かになるまで
The rush does not end all at once. Orders slow down, surfaces clear, equipment returns to its place, and the tension of service gradually leaves the room.
ピークが終わっても、勤務はまだ終わらない。
最後のオーダー、片付け、清掃、翌日の仕込み確認。
仕事を続けながら、厨房から少しずつ緊張が抜けていく時間を描いたON SHIFT作品です。
JOURNAL 11
Questions about what happens after a kitchen closes. ホテル厨房の閉店後についてよくある疑問
厨房は閉店後すぐに帰れますか?
基本的には、営業終了後にも片付け、食材整理、器具の洗浄、厨房清掃などの仕事があります。
どれくらい仕事が残るかは、厨房やその日の営業状況によって異なります。
ホテル厨房の閉店後は何をしていますか?
主に残った食材の整理、調理器具の洗浄、作業台や調理設備の清掃、床清掃、ごみの整理、翌日の準備、最終確認などを行います。
職場やシフトによっては、在庫確認や次の担当者への引き継ぎも行います。
閉店後の厨房清掃は毎日行いますか?
日常的に使用する器具、作業台、床などは、営業中の清掃に加えて営業終了後にも整える厨房があります。
一方、大規模な清掃や設備の詳しいメンテナンスなどは、厨房ごとのスケジュールで行われる場合があります。
閉店後に翌日の仕込みもしますか?
厨房やシフトによっては行います。
翌朝すぐ必要になるものや、準備に時間がかかるものを前日に進め、次の担当者へ引き継ぐことがあります。
営業終了から退勤まで何分かかりますか?
一律には言えません。
厨房の規模、人員、その日の忙しさ、営業中にどこまで片付けているか、翌日の仕込み量などによって変わります。
勤務先を検討するときは、店舗の閉店時間だけでなく、実際のシフト終了時刻を確認してください。
ホテルは24時間営業でも厨房に閉店作業はありますか?
あります。
ホテル全体が24時間動いていても、レストラン、宴会、朝食など、それぞれの営業には区切りがあります。
担当している営業が終われば、厨房では片付け、清掃、食材整理、次の営業への準備などを行います。
閉店作業は営業が終わってから始めますか?
すべてを営業終了後に始めるとは限りません。
営業に支障がない範囲で、使い終えた器具や食材、空いた持ち場などを少しずつ整理していく場合があります。
その積み重ねによって、最後の料理を出したあとの閉店作業を進めやすくできます。
SUMMARY
Closing means preparing the kitchen to begin again. まとめ|ホテル厨房の閉店後は「明日のスタートライン」へ戻す時間
ホテル厨房の閉店後は、単に掃除をして帰る時間ではありません。
営業中は、料理を作り続けます。
最後の料理を出したら、今度は営業で広がった厨房を一つずつ整理していきます。
食材を戻す。
器具を戻す。
作業台を戻す。
床や設備を整える。
そして、明日使える厨房へ戻す。
ホテルや厨房によって細かな作業や担当は異なります。
営業終了から退勤までの時間も同じではありません。
翌日の仕込みをどこまで行うかも違います。
それでも、閉店後に目指している状態には共通する部分があります。
明日、最初に厨房へ入る人が、また料理を始められる状態にする。
この意味で、閉店作業は「今日を終わらせる仕事」であると同時に、「明日を始めるための仕事」でもあります。
朝には食材や器具が並びます。
営業中には料理が次々と作られます。
そして夜になると、それらが一つずつ片付いていきます。
最後には、また静かなステンレスの作業台が残ります。
それは一日の仕事が終わった状態であると同時に、次の一日を始められる状態です。
AFTER SHIFT
Where the kitchen goes quiet, tomorrow has already begun.
厨房が静かになる頃、次の一日はもう始まっている。

