
KITCHEN JOURNAL
25 Things Only Chefs Understand in a Hotel Kitchen
ホテルの調理師・料理人あるある25選
Small habits, sounds and moments that begin to feel completely normal once you have worked inside a professional kitchen.
厨房で働くうちに、いつの間にか当たり前になっていく25のこと。
Professional kitchens have their own rhythm, language and habits. Some are taught. Others become so natural that cooks barely notice them anymore.
From knives, timers and crowded workstations to breakfast shifts, banquet plating and the silence after service, here are twenty-five small things that may feel familiar to anyone who has spent time working inside a professional kitchen.
調理師や料理人同士で話していると、
「あ、それ分かる」
「うちの厨房でもある」
「それ、料理人あるあるだよね」
と、違う職場で働いていても通じる話があります。
ホテル。
レストラン。
宴会。
給食や大量調理。
作っている料理も、厨房の広さも、働いている人数も違います。
それでも料理を仕事にしていると、似た感覚や習慣が身についていくことがあります。
調理師・料理人の「あるある」は、仕事内容そのものより、毎日の仕事を繰り返すうちに身体へ染み込んだ小さな習慣に表れます。
いつもの場所にある道具。
包丁を入れたときの感触。
何個も鳴っているタイマー。
営業直前の静かな厨房。
「あと何枚?」という声。
最後の料理を送り出したあとの作業台。
仕事中には意識していなくても、言葉にされると「確かに」と思うものがあります。
この記事では、ホテル厨房での実務経験を中心に、調理現場で働いた人なら共感しやすい「調理師・料理人あるある」を25個集めました。
もちろん、すべての厨房、すべての調理師・料理人に当てはまるわけではありません。
料理ジャンル、厨房規模、役職、職場環境、本人の経験によって違います。その違いも含めて、厨房で働く人から見える日常を見ていきます。
JOURNAL 01
This is not another job-description article. これは「仕事内容」ではなく、仕事を続けるうちに身につく感覚の話
ホテル調理師の仕事には、仕込み、調理、盛り付け、食材管理、清掃などがあります。
しかし、この記事で見たいのは仕事内容そのものではありません。
毎日厨房へ入っているうちに、
いつの間にか当たり前になったこと。
考えなくても身体が動くようになったこと。
忙しいときほど無意識にしていること。
厨房を離れてから初めて気づくこと。
そんな小さな感覚です。
仕事を説明するのではなく、その仕事をしている人には厨房がどう見えているのかを集める。
その視点で見ると、「あるある」は単なる笑い話ではなく、厨房という仕事の特徴そのものが表れたものでもあります。
JOURNAL 02
Your hands remember before you do. 道具と身体に染み込んでいく料理人あるある
あるある01|道具がいつもの位置にないと、すぐ分かる
トング。
レードル。
ボウル。
バット。
毎日同じ持ち場で仕事をしていると、道具の位置を一つずつ考えなくなります。
手を伸ばせば、そこにある。
それが当たり前になります。
だから、ほんの少し位置が変わっただけでも、
「あれ?」
となります。
あるある02|包丁の切れ味が少し変わっただけでも気づく
毎日使う包丁は、少しずつ手の感覚とつながっていきます。
昨日より少し入りにくい。
野菜へ刃が当たった感触が違う。
大きく切れなくなったわけではなくても、いつも使っている本人には違いが分かることがあります。
あるある03|タイマーが何個鳴っていても、自分のタイマーが分かる
厨房では、複数のタイマーや機器の音が同時に鳴ることがあります。
オーブン。
加熱時間。
仕込み。
どこかで音が鳴る。
それでも仕事に慣れてくると、
「これは自分のじゃない。」
と、音を聞いた瞬間に判断することがあります。
あるある04|厨房へ入ると自然に歩き方が変わる
狭い通路。
開く冷蔵庫。
熱い鍋を持っている人。
料理を運んでいる人。
厨房では、目の前だけではなく周囲の動きを見ながら歩きます。
誰かが曲がってくるかもしれない。
後ろから人が通るかもしれない。
仕事に慣れるほど、避け方や通り方まで自然になっていきます。
あるある05|「後ろ通ります」が考える前に出てくる
誰かの背後を通るとき。
「後ろ通ります。」
熱いものを持っているとき。
「熱いです。」
人が同時に動く厨房では、自分の位置や動きを周囲へ伝える声があります。
何度も繰り返していると、意識して言葉を選ぶというより、身体の動きと一緒に声が出るようになることがあります。
厨房では、道具の場所、音、人の動きまで少しずつ「考えるもの」から「感じるもの」へ変わっていきます。
JOURNAL 03
The rush has its own language. 営業が始まると現れる厨房あるある
あるある06|忙しくなる直前の静かな数分が、逆に落ち着かない
仕込みは終わっています。
持ち場も整っています。
まだオーダーは入っていません。
厨房は静かです。
でも、もうすぐ忙しくなることは分かっています。
忙しい時間そのものより、その直前の静けさの方が妙に緊張する日があります。
あるある07|忙しくなるほど会話が短くなる
普段なら文章で伝えることも、営業中は短くなることがあります。
「あと2。」
「出ます。」
「お願いします。」
必要な情報だけが飛び交います。
短い時間で情報を伝えながら、同時に手も動かしているからです。
あるある08|一皿出した瞬間、もう次の料理を考えている
料理を仕上げます。
盛り付けます。
サービススタッフへ渡します。
一皿が完成しました。
でも、その料理を眺めている時間はほとんどありません。
次のオーダーがあります。
次の加熱があります。
次の皿があります。
料理を送り出した瞬間は、同時に「次の一皿」が始まる瞬間でもあります。
あるある09|真正面を見ながら、視界の端でも周囲を見ている
目の前では自分の仕事をしています。
でも同時に、
右に誰がいるか。
後ろを誰が通ったか。
隣の持ち場がどこまで進んでいるか。
なんとなく視界へ入っています。
厨房では、自分の仕事だけを見ているわけではありません。
あるある10|作業台が狭くなると、急に仕事のリズムが悪くなる
バット。
ボウル。
使い終わった器具。
次に使う食材。
少しずつ作業台に物が増えていきます。
そして、気づけば作業する場所がありません。
一度片付ける。
また仕事を始める。
数分前と同じ作業でも、スペースが戻るだけで動きやすさが変わります。
JOURNAL 04
Good service is built from small resets. 段取りと「次」を考える料理人あるある
あるある11|少し手が空くと、次にできることを探している
営業中に、ほんの少し手が空くことがあります。
でも、
「何もしない時間」
になるとは限りません。
次に使う食材を見る。
不足しているものを補充する。
器具を戻す。
作業台を拭く。
次に忙しくなる前に、できることを少し進めます。
あるある12|片付けは「仕事が終わってから」だけするものではない
使い終わった器具。
もう使わない食材。
空いた容器。
営業に支障がない範囲で、少しずつ片付けます。
すべてを最後まで残してしまうと、営業終了後にその仕事がまとめて返ってくるからです。
仕事が速い人を見ると、「作る速さ」だけではなく「仕事を残さない速さ」が違うと感じることがあります。
あるある13|ラップの端が見つからない数十秒が妙に長い
料理そのものとは直接関係ありません。
でも忙しいときにラップの端が見つからない。
何度回しても見つからない。
実際には短い時間でも、営業中だととても長く感じます。
あるある14|バットやボウルを見ただけで「この量ならこれ」が分かる
毎日同じ道具を使っていると、細かなサイズ表記を確認しなくても感覚で選べるようになることがあります。
この仕込み量ならこれ。
この料理ならこのバット。
この量ならこのボウル。
道具を選ぶ時間も少しずつ短くなります。
あるある15|便利そうな新しい道具より、結局いつもの道具を使う
新しいトング。
新しい包丁。
新しい器具。
便利そうに見えても、最初は少し違和感があります。
長く使ってきた道具には、重さ、握り方、動かし方まで身体が慣れているからです。
JOURNAL 05
Hotel kitchens have their own version of normal. ホテル厨房で働くと分かる「数字と時間」のあるある
あるある16|朝食担当は、街がまだ寝ている時間に一仕事している
まだ外が暗い。
道を歩いている人も少ない。
ホテルのロビーも静かです。
でも厨房では、すでに朝食の準備が始まっています。
料理を作る。
朝食会場へ出す。
営業開始へ向けて仕事が進みます。
宿泊客が朝食会場へ来る頃には、厨房側ではすでに何時間か仕事をしていることがあります。
あるある17|宴会人数を聞くと「人」より先に仕事量が浮かぶ
「今日の宴会は300名。」
その数字を聞いたとき、
300人のお客さん。
だけではなく、
300人分の食材。
300人分の仕込み。
300枚の皿。
300人分の盛り付け。
が同時に頭へ浮かぶことがあります。
宴会人数は、厨房へ入った瞬間に「仕事の量」へ変換されます。
あるある18|何十枚、何百枚もの皿が並ぶと「本番が来た」と感じる
まだ料理がのっていない皿が、作業台へ並びます。
一列。
その次の列。
さらにその先まで。
皿が並んだ光景を見ると、
「これから始まる。」
という空気が厨房に生まれます。
あるある19|結局「あと何枚?」が一番知りたい
盛り付けが始まります。
最初は大量にあった皿が少しずつ減っていきます。
すると、
「あと何枚?」
「残りいくつ?」
という確認が飛びます。
30枚でも300枚でも、最後には残りの数が気になります。
あるある20|「営業終了」と「退勤」は別の言葉
最後のお客さんが帰ります。
料理を出し終えます。
でも、
「終わった。帰ろう。」
とはならないことがあります。
食材を整理する。
器具を洗う。
厨房を清掃する。
翌日の準備をする。
厨房で働くと、「店が閉まる時間」と「自分の仕事が終わる時間」は別だと分かります。
JOURNAL 06
Kitchen habits sometimes follow you outside. 厨房を離れても残る料理人あるある
あるある21|スーパーへ行くと食材の状態を見てしまう
野菜。
魚。
肉。
仕事で毎日食材を見ていると、買い物へ行ったときも自然に状態へ目が向くことがあります。
そして値段も見ます。
仕事でよく扱っている食材なら、なおさら気になります。
あるある22|外食すると料理だけでなく皿や盛り付けまで見てしまう
食事へ行っても、料理そのものだけを見ているとは限りません。
この皿を使うんだ。
こう盛るんだ。
ソースはここに置くんだ。
何気なく仕事目線が出てくることがあります。
あるある23|一日中料理した日の自分の食事は意外と簡単
仕事では何十人分、何百人分もの料理を作ります。
でも仕事を終えて家へ帰ったあと、自分のためにもう一度本格的な料理を作りたいとは限りません。
簡単なもの。
すぐ食べられるもの。
残っているもの。
そんな日もあります。
それでも「料理人なんだから何か作って」と言われる。
これも、人によっては少し分かる話かもしれません。
JOURNAL 07
The rush ends before the feeling does. 最後の一皿のあとに残る料理人あるある
あるある24|最後の料理を出した瞬間、急に疲れを感じる
営業中はオーダーがあります。
次に作る料理があります。
時間を見ています。
周囲も動いています。
だから、自分が疲れていることをあまり考えず動き続ける日があります。
そして最後の料理を送り出します。
張っていたものが少し緩みます。
その瞬間に、
「あ、疲れてたんだ。」
と感じることがあります。
営業ピーク、立ち仕事、勤務時間、閉店後の作業など、ホテル厨房で大変と感じやすい部分については、別の記事で詳しく整理しています。
ホテル調理師がきついと言われる理由と、実際に大変と感じやすい場面を見る
あるある25|何もなくなった作業台を見ると「今日も終わった」と感じる
営業前には食材が並んでいた作業台。
営業中には皿やバット、器具でいっぱいだった場所。
それが少しずつ片付いていきます。
食材が冷蔵庫へ戻る。
器具が洗われる。
皿がなくなる。
そして最後には、ステンレスの作業台だけが残ります。
料理人にとって一日の終わりは、時計の数字より「何もなくなった厨房」を見たときに感じることがあります。
同じ厨房なのに、営業中とはまったく違って見えます。
少し前まで声が飛び交っていた場所から、仕事の音が一つずつ消えていきます。
JOURNAL 08
Different kitchens. Familiar moments. なぜ違う厨房でも「あるある」が通じるのか
この記事の25個すべてに共感する必要はありません。
むしろ、職場によって違う方が自然です。
大きなホテル厨房。
小さなレストラン。
宴会厨房。
朝食厨房。
大量調理。
料理ジャンルも仕事の方法も違います。
それでも、
道具の位置を身体で覚える。
忙しいときほど言葉が短くなる。
次に必要になる仕事を考える。
周囲の動きを見る。
仕事が終われば厨房を元へ戻す。
といった感覚には、職場を越えて重なる部分があります。
「あるある」が通じるのは、同じ厨房で働いたからではなく、違う厨房で似た時間を経験してきたからなのかもしれません。
ホテル厨房の一日を、出勤、仕込み、営業、片付けまで時間順に知りたい場合は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
JOURNAL 09
Some parts of kitchen life are easier to feel than explain. 言葉だけでは伝えにくい厨房の「あるある」もある
あるあるの中には、文章で説明しやすいものがあります。
道具の場所。
タイマー。
盛り付ける皿の数。
一方で、説明だけでは伝えにくいものもあります。
営業直前の静けさ。
ピークのあとに少しずつ減っていく声。
最後の料理を出したあとの疲れ。
片付いていくステンレスの作業台。
厨房から一日の緊張が抜けていく時間。
仕事内容は言葉で説明できます。でも、その仕事をしているときの「空気」は、説明だけでは伝わらないことがあります。
AFTER SHIFTでは、その時間をON SHIFTのVisual Storyとして描いています。
CONNECTED STORY
Before the Kitchen Goes Quiet|厨房が静かになるまで
The rush does not disappear all at once. The last orders leave, equipment returns to its place, and a busy hotel kitchen slowly becomes quiet.
最後のオーダーを送り出しても、勤務はまだ終わらない。
片付け、清掃、翌日の準備を進めながら、ホテル厨房から少しずつ営業中の緊張が抜けていく。
料理人にとっては日常でも、客席からはほとんど見えない時間を描いたON SHIFT作品です。
JOURNAL 10
Questions about chef and kitchen “common things.” 調理師・料理人あるあるについてよくある疑問
調理師・料理人にはどんな「あるある」がありますか?
道具の位置を身体で覚える、包丁のわずかな切れ味の変化に気づく、タイマーの音を聞き分ける、営業中は会話が短くなる、料理を出した直後から次の仕事を考えるなど、厨房で働くうちに身につく感覚があります。
ただし、職場、料理ジャンル、経験、人によって感じ方は異なります。
ホテル厨房ならではの「あるある」はありますか?
朝食担当では早朝から厨房が動くこと、宴会では人数を仕込み量や皿数として考えること、数十枚・数百枚の皿を一斉に扱うことなど、朝食や宴会を持つホテルならではの場面があります。
料理人は道具の場所を覚えているものですか?
同じ厨房や持ち場で繰り返し仕事をしていると、頻繁に使用する道具の位置を自然に覚えることがあります。
そのため、いつもの場所から移動していると、すぐ違和感を覚えることもあります。
厨房で「後ろ通ります」と声をかけるのはなぜですか?
厨房では複数のスタッフが狭い場所を同時に動き、熱い鍋や料理、器具などを持って移動することがあります。
自分がどこを通るのか周囲へ伝えることで、お互いの動きを把握しやすくします。
料理人は家でも本格的に料理をしますか?
人によります。
休日にも料理を楽しむ人もいれば、仕事で一日料理をしているため、自分の食事は簡単に済ませる人もいます。
厨房では営業終了後すぐに帰れますか?
必ずしも営業終了と同時に退勤するわけではありません。
食材整理、器具の洗浄、厨房清掃、翌日の準備などを行ってから退勤する職場があります。
ホテル調理師の一日はどんな流れですか?
配属先やシフトによって異なりますが、予定確認、食材確認、仕込み、営業準備、調理・提供、片付け、翌日の準備といった仕事があります。
一日の詳しい流れについては、本文中で紹介している「ホテル調理師の一日の流れ」で時間順に解説しています。
SUMMARY
The smallest habits often say the most about kitchen life. まとめ|料理人あるあるには「厨房で過ごしてきた時間」が表れている
料理人あるあるというと、少し笑える話や小さな癖のように見えます。
でも一つずつ見ていくと、そこには厨房という仕事の特徴が表れています。
道具の位置を身体で覚える。
周囲の動きを視界の端で見る。
忙しくなるほど言葉が短くなる。
料理を出したら、すぐ次を見る。
人数を食材や皿の数へ置き換える。
営業終了と退勤は同じではないと知っている。
どれも特別な資格や技術の名前ではありません。
誰かから「今日からこうしてください」と教えられて身につくものばかりでもありません。
毎日厨房へ入り、似た仕事を何度も繰り返すうちに、少しずつ身体へ残っていく感覚です。
違う厨房で働いていても「わかる」と思えるのは、同じ場所にいたからではなく、似た時間を何度も経験してきたからなのかもしれません。
朝が早い日。
営業直前の静かな時間。
一気に忙しくなるピーク。
何十枚、何百枚と並ぶ皿。
最後の一皿。
何もなくなった作業台。
そして制服を脱いで厨房を出る時間。
職場も、料理も、働き方も違います。
それでも厨房で働いた人には、少しだけ共通して見える景色があります。
AFTER SHIFT
Different kitchens. Familiar moments.
厨房は違っても、「わかる」と思う瞬間がある。

