The Schedule Board|来月のシフト表
ON SHIFT
The Schedule Board 来月のシフト表

THE STORY

Next month appears before it begins. まだ始まっていない来月が、先に壁へ現れる。

Early shifts.
Late shifts.
Consecutive working days.
And one empty square.

It is only a sheet on the kitchen wall.

But inside its small squares,
mornings, nights, working days
and days off have already been arranged.

厨房の壁に、
新しい勤務表が掲示されている。

まだ今月の勤務は続いている。

それなのに紙の上には、
もう来月がある。

早番。
通常勤務。
遅番。
連勤。
休日。

小さなマスに書かれているのは、
ただの勤務記号に見える。

けれど、その一つひとつが、
起きる時間を決める。
厨房へ来る時間を決める。
帰る時間を決める。

そして、
仕事ではない時間がどこに残るのかも決めていく。

勤務表を見るということは、
まだ始まっていない一か月を、
少しだけ先に見ることなのかもしれない。

ホテル厨房の壁に掲示された来月の勤務表を確認する白石澪
SCENE 01

Next Month on the Wall 来月が壁に現れる

澪がそれに気づいたのは、
作業の途中だった。

厨房の壁。

昨日まではなかった紙が、
一枚増えている。

来月の勤務表。

すでに一人、
その前に立っている。

通り過ぎながら見る人もいる。

「また早番だ。」

「そこ休みじゃん。」

「その日は遅番。」

いくつか言葉が交わされる。

でも、
厨房は止まらない。

野菜を切る。

食材を運ぶ。

火を見る。

今日の仕事は、
今日の時間の中で続いている。

そのすぐ横で、

まだ始まっていない来月だけが、
すでに壁の上に並んでいた。

Today's kitchen keeps moving.
But on the wall beside it,
next month has already appeared.

作業の途中でホテル厨房の来月のシフト表を見る白石澪
SCENE 02

Following Her Name 自分の名前を横へ追う

少しして、
澪にも勤務表を見る時間ができた。

自分の名前を探す。

見つける。

その横へ、
人差し指を置く。

一日。

次の日。

また次の日。

指を横へ動かしていく。

早番。

早番。

通常勤務。

遅番。

そして、また遅番。

紙の上では、
どれも小さな記号しかない。

けれど澪には、
その向こう側が見える。

まだ暗いうちに起きる朝。

朝食が始まる前の厨房。

すでに動いている厨房へ入る午後。

最後の料理を出したあとも続く夜。

一つの記号を見るたびに、
その日の時間が少しずつ形になる。

勤務表に書かれているのは勤務時間。

けれど見えてくるのは、
その日の生活だった。

A shift mark is small on paper.
But Mio can already see
the morning or night waiting behind it.

ホテル厨房で働きながら来月の勤務時間を意識する白石澪
SCENE 03

The Spaces Between Work 仕事と仕事のあいだ

澪はさらに指を動かす。

勤務。

勤務。

また勤務。

横一列に並べて見ると、
一日ずつ過ごしているときとは違って見える。

ここは早番。

その次も勤務。

さらに次の日も厨房へ来る。

途中には、
宴会が入っている日もある。

忙しくなりそうな週末もある。

来月の自分が、
どこで働いているのか。

何時ごろ起きるのか。

いつ家へ帰るのか。

何日仕事が続くのか。

紙の上を指で追うだけで、
それが少しずつ分かってくる。

そして同時に、

仕事と仕事のあいだに、
どれくらい自分の時間があるのかも見えてくる。

シフト表は、
働く時間だけを並べているようで、
その周りにある時間まで形づくっている。

The schedule arranges working hours.
At the same time,
it reveals the spaces that remain between them.

SCENE 04

One Empty Square 何も書かれていない一日

澪の指が止まる。

一つだけ、
勤務が入っていないマス。

休日。

まだ予定はない。

誰かと会う約束もない。

行く場所も決めていない。

朝早く起きる理由もない。

小さな一マス。

なのに、
そこだけ少し広く見える。

遅くまで眠ってもいい。

出かけてもいい。

一日部屋にいてもいい。

何も決めなくてもいい。

何も書かれていないから、
まだ何にでもなる。

厨房の向こうから、
澪を呼ぶ声がする。

指を離す。

勤務表から目を離す。

作業台へ戻る。

野菜が残っている。

容器も整理しなければならない。

今日の仕事は、
まだ終わっていない。

でも壁の上には、

まだ何も起きていない、
澪だけの一日がもう存在していた。

澪はもう一度、
勤務表の方を見る。

早番も、

遅番も、

連勤も、

そこにある。

そして、その間に、
何も書かれていない一マスがある。

来月はまだ始まっていない。

それでも、

働く日と、

働かない日だけは、
もう静かに分かれていた。

Nothing has happened there yet.
Nothing has been planned.

And because the square is still empty,
it can become almost anything.

ホテル厨房で来月のシフト表を確認したあと仕事へ戻る白石澪
ABOUT THIS WORK

A schedule arranges more than working hours. 勤務表が決めるのは、働く時間だけではない。

『The Schedule Board|来月のシフト表』は、 ホテル厨房ではごく日常的な 「新しい勤務表が掲示される日」を描いた ON SHIFT作品です。

ホテル厨房では、 朝食、仕込み、ランチ、宴会、 ディナー、清掃など、 時間帯によってさまざまな仕事が動いています。

そのため勤務する時間帯も、 担当する営業や職場によって異なります。

早番。
中番。
遅番。
職場によっては中抜けなどの働き方。

ただし、この作品で描きたいのは、 シフト制度そのものではありません。

働く人にとって勤務表を見るということは、 単に始業時刻と終業時刻を確認するだけではないからです。

何時に起きるのか。
いつ家を出るのか。
何時ごろ帰るのか。
何日勤務が続くのか。
そして休日がどこにあるのか。

仕事の時間が決まることで、
その周囲にある生活の時間も少しずつ形を持ちます。

この作品の中心にあるのは、 大きな出来事ではありません。

一か月分の勤務を追っていた指が、 何も書かれていない一つのマスで止まる。

ただ、それだけです。

けれど、 仕事によって細かく区切られている一か月の中では、 「何も決まっていない」という状態そのものが、 他のマスとは違って見えることがあります。

まだ予定のない休日は、
空白ではなく、
これから自分で決められる時間でもあります。

This work begins with an ordinary monthly schedule. Early shifts, late shifts and working days organize the hours of a hotel kitchen. But for the person reading it, the same grid also begins to shape mornings, evenings, rest and the spaces left for life outside work.

ホテル調理師の勤務時間や、 早番・中番・遅番、 中抜けなどの勤務形態については、 Kitchen Journalで実務ベースに詳しく整理しています。

CONNECTED WORK

One empty square can become two different stories. 一つの空白から、二つの物語が始まる。

澪が勤務表の中で見つけた、
何も書かれていない一日。

現実では、
そのマスはいずれ本当の休日になります。

目覚ましも、
出勤時間も、
次にやる仕事もない一日。

HOLIDAYでは、
その空白を澪自身の時間として過ごします。

そして夜。

夢の中では、
規則正しく並んでいた勤務表のマス目そのものが
厨房と融合し、巨大な迷宮へ姿を変えていきます。

In reality, the empty square becomes a day off.
In Mio's dream,
the entire schedule becomes somewhere she can walk.

AFTER SHIFTの架空の登場人物、28歳のホテル調理師・白石澪
FEATURED CHARACTER

28歳のホテル調理師。

ホテル厨房では、 担当する営業やその日の役割によって、 働く時間帯が変わることがあります。

早い朝。

営業の真ん中から入る日。

夜の片付けまで残る日。

そして、その間にある休日。

勤務表の一つひとつのマスが、 澪の仕事と、 その外側にある時間をつないでいます。

Mio is a 28-year-old hotel chef. Her monthly schedule shapes not only the hours she spends inside the kitchen, but also the life that continues around them.

SUPPORT AFTER SHIFT

Help this world keep growing. この世界を、もう少し先へ。

この作品を気に入っていただけたら、
PayPalからAFTER SHIFTの今後の創作活動を 任意で応援していただけます。

If this visual story stayed with you, you can support the creation of future AFTER SHIFT works.

支援は任意です。 将来の作品・公開時期・制作物の購入や予約を意味するものではありません。
Voluntary support only. It does not purchase, reserve, or guarantee any future work or release.

おすすめの記事