
Three hundred disappears when the work begins. 仕事が始まると、「300」という数字は消えていく。
One plate.
Then the next.
The number returns only when the work is almost over.
Tonight's banquet is for three hundred.
Inside the kitchen,
that number means something different.
今夜の宴会は、300名。
その数字を聞いたとき、
最初に思い浮かぶのは300人の顔ではない。
必要な食材。
並べる皿。
盛り付ける回数。
そして、料理を出さなければならない時間。
厨房では、人数がすぐに
「これから必要になる仕事」へ変わっていく。
Before Three Hundred まだ「300」が見えている時間
宴会の開始までは、まだ時間がある。
澪はラックに積まれた皿を見る。
足りているか。
次の食材は揃っているか。
盛り付ける場所は空いているか。
ワゴンは動かせるか。
まだ一枚も料理を出していないのに、
頭の中ではすでに宴会が始まっている。
300名。
厨房では、その大きな数字を
皿、食材、時間、人の動きへ分けていく。
まだ静かな時間ほど、
その先で起こることを考えている。
Three hundred is never just a guest count. Before service begins, it has already become plates, portions, timing and preparation.
When the Line Starts 一斉盛り付けが始まる
開始時間が近づく。
さっきまで普通に交わしていた会話が短くなる。
作業台へ、白い皿が並び始める。
ここからは、
自分だけ速ければいいわけではない。
前から皿が来る。
自分の仕事をする。
次へ送る。
前が止まれば、自分も止まる。
自分が遅れれば、その先も止まる。
誰か一人が300枚を作っているのではない。
一枚の皿を、
何人もの仕事が通り過ぎていく。
No one finishes three hundred plates alone. Each plate passes through several hands, and the whole line has to keep moving together.
The Number Disappears 「300」を考えなくなる
盛り付けが始まってしばらくすると、
澪は300という数字を考えなくなっていた。
見ているのは、目の前の一枚。
料理を置く。
位置を見る。
次へ送る。
また一枚来る。
何枚目なのかは、もう分からない。
数える必要もない。
ただ、ときどき視線を上げると、
あれほど並んでいた皿が少なくなっている。
容器の中の食材も減っている。
それで初めて、
自分たちが前へ進んでいることが分かる。
Once the line is moving, Mio no longer sees three hundred. She sees one plate, and then the next.
When Three Hundred Returns 「300」が戻ってくる
最後の皿が厨房を出る。
それで仕事が終わるわけではない。
容器を集める。
作業台を拭く。
ワゴンを戻す。
そして少しすると、
宴会場から使用済みの皿が帰ってくる。
出ていったときは、
どれも同じように仕上げた皿だった。
戻ってくると、一枚ずつ違う。
きれいに食べ終えた皿。
少し料理が残った皿。
ほとんど手が付いていない皿。
盛り付けている間は見えなかった300人が、
そのとき初めて、少しだけ見える気がする。
最後の料理を送り出したあとも、 厨房では片付け、清掃、翌日の準備へと仕事が続きます。 営業が終わってから退勤するまでの流れは、 Kitchen Journalで詳しく紹介しています。
ずっとあとになって、
澪は宴会場の前を通る。
数時間前まで300人のために
厨房全体が動いていたとは思えないほど、
会場は静かだった。
長いテーブル。
白いクロス。
誰も座っていない椅子。
300という数字は、もうどこにもない。
澪は少しだけ中を見て、
また厨房へ戻っていった。
帰る前に、まだ仕事が残っている。
The plates left looking almost identical. They return one by one, carrying different traces of the people beyond the kitchen walls.
You never work on three hundred plates at once. 300枚を、一度に作っているわけではない。
『Three Hundred Plates|300枚の皿』は、 制作者自身がホテル厨房で宴会調理に関わってきた経験を 起点にしたON SHIFT作品です。
宴会予定に「300名」と書かれていても、 実際の厨房で300という数字だけを見ながら 仕事をするわけではありません。
人数を確認した瞬間から、 食材、仕込み量、皿、盛り付け、 ワゴン、提供時間へと仕事を分けていきます。
そして一斉盛り付けが始まれば、 見るものはさらに小さくなります。
目の前の一枚を仕上げる。
次へ送る。
また一枚を仕上げる。
一人だけ速く動けば終わる仕事でもありません。
前から受け取り、
自分の仕事をして、
次の人へ渡す。
大きな宴会を動かしているのは、 こうした小さな仕事と、 周囲へ仕事をつないでいく動きの積み重ねです。
そして、仕事の最中には見えなかったお客様の存在が、 宴会場から戻ってきた皿によって あらためて感じられることがあります。
同じように仕上げて送り出した皿が、 一枚ずつ違う状態になって戻ってくる。
ON SHIFTで描きたいのは、 仕事内容の説明だけでは残りにくい、 実際にその流れの中へ入ったときの景色です。
This story is rooted in first-hand hotel kitchen experience. A banquet may begin as one large number, but once the work starts, that number disappears into smaller movements: one task, one plate, one moment at a time.
この作品で描いた背景には、 実際のホテル宴会厨房で行われる仕込み、 一斉盛り付け、提供時間からの逆算、 サービススタッフとの連携があります。
大人数の宴会を厨房ではどのように準備し、 何十枚、何百枚という料理を 決められた時間に送り出していくのか。 実際の仕事の流れはKitchen Journalで詳しく紹介しています。
The banquet ends. The memory does not. 宴会は終わっても、その日の景色は残っている。
何度も目の前を通った白い皿。
長く並んだテーブル。
宴会が終わったあとの空の椅子。
仕事を終えたあと、
その日の記憶は澪の眠りの中で
別の風景へ姿を変えていきます。
The repeated movements of the working day return later inside Mio's sleep.
Mio Shiraishi 白石 澪
28歳のホテル調理師。
大きな宴会の中でも、 澪が実際に向き合っているのは、 その瞬間、目の前にある一つの仕事です。
一枚を仕上げる。
周囲を見る。
次へつなぐ。
その繰り返しの先に、 数百人分の宴会があります。
Mio is a 28-year-old hotel chef. Inside a large banquet service, she works one plate, one movement, and one moment at a time.
The same kitchen, seen from two sides. 同じ厨房を、仕事と記憶の両側から。
実際の厨房経験から生まれるON SHIFTと、
仕事の記憶が眠りの中で姿を変えるMIDNIGHT FANTASY。
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